「歯がしみる!」歯医者の虫歯治療はどう進む?なるべく削らない?
2023年4月27日
こんにちは、中野坂上サークル歯科クリニックの院長・大金です。
このページでは、当院の患者さまをモチーフに虫歯治療にお悩みの方がご自身に合った最適な虫歯治療の選択ができるように、虫歯や詰め物についての基礎知識を解説します。
今回の患者さま(歯医者が苦手)
こんにちは、阿部優一(51)です。
都内でサラリーマンをしています。
みなさん、歯医者は好きですか?
私は歯医者が苦手で・・先延ばしをしていたら、とうとう歯がしみてきちゃいました。
今日の昼休みに会社の近くにある歯医者を予約しました。
緊張しますが、行ってみます。
目次
初めての来院
こんにちは、阿部さん、はじめまして。院長の大金と申します。
よろしくお願いします!
あ、こんにちは・・よろしくお願いします。
先ほどは問診票にご記入いただき、ありがとうございました!
「1ヶ月前から」「虫歯がある」ということですね。
はい。
お痛みは出ていますか?
最近、冷たいものを飲むとしみてそれで・・他に症状はないです。
ありがとうございます。あと、治療に関する優先順位は「なるべく治療回数、治療期間を少なく」ということですね。
はい。
かしこまりました。
これからお口を確認させていただきますね。
こちらにどうぞ。
初期(軽度)の虫歯は削らない?5段階の虫歯進行段階と治療への考え方
結論からいうと、阿部さんのお口にはいくつか虫歯がありました。
これから阿部さんと虫歯の治療方針について相談したいのですが、そのために虫歯とはそもそもどういうものなのかについて簡単に説明させてください。
はい。
カンタンにいうと、虫歯は進行していく感染症なんです。
最近よく聞く新型コロナウイルス感染症と同じ、感染症です。原因となるのが細菌とかウイルスという分類はありますが、感染症という意味では同じです。
ただ、新型コロナウイルス感染症と違って、虫歯は寝ても治らないんですね。
なぜかというと、人間のカラダの硬いものの中に入りこむ(硬組織疾患)ので、血液で代謝されないんです。だから、虫歯がいったん進行すると、ずっとそこに留まってしまいます。
へぇ、虫歯が感染症とか考えたこともなかったです。だからすぐ削るんですね。
私たち歯医者も「虫歯があったら削る」と習ってきたんです。
以前は「虫歯がある」「虫歯がない」しかなかったんですね。でも2003年に虫歯が5段階に分類されるようになって、過度に歯に負担のかかる治療を減らせるようになりました。
どんな5段階かというと・・・
C0の虫歯 〜虫歯の5段階:初期〜
Cのゼロというほどなので、初期の虫歯です。
C0とは
初期の虫歯
C0の歯の状態
歯に穴は開いていないが、カルシウム分が少なくツヤが無くなり、白く濁って見えたり薄い茶色に見えます。
C0虫歯の症状
痛みなどの自覚症状はほとんどありません。
阿部さんもC0の虫歯が何本かありましたが、削る必要は全くありません。しかし、放置すると進行するリスクはもちろんありますので、衛生士から適切な磨き方のレクチャーを今後させていただきます。また定期的なチェックも必要です。3カ月に1度が理想といわれています。
ほっ。(虫歯なのに歯磨きだけでいいって逆にびっくり)
C1の虫歯 〜虫歯の5段階:エナメル質の虫歯〜
C1からが本当の虫歯です。
C1とは
エナメル質の虫歯
C1の歯の状態
歯の表面(エナメル質)に穴が空き、薄く欠けている状態
C1虫歯の症状
痛みやシミを感じない場合が多い。
阿部さんの写真をみると黒いところがあるんですが・・
たしかに・・黒いなぁ。
C1の虫歯はエナメル質の虫歯なんですよ。
でも今回は削りません。
え・・本当ですか?
たしかに歯が黒くなっているんですが、エナメル質は歯を守る防御層です。
だれもヘルメットが傷ついてすぐに買い換えないのと一緒で、虫歯がエナメル質にあってエナメル質の範囲内に留まっていれば、虫歯が進行していなければ、削る必要はありません。
そうでしたか。(よかった~)
でも、そのまま放っておいてしまうとひどくなってしまうので、定期的なチェックは必要です。
今回は表面を研磨してあげてペーストをつけて磨いてあげて、フッ素で硬くしましょう。
ひどくならないことって、あるのでしょうか?
はい、実は私自身も十代の頃に見つかったC1の虫歯が未だにC1なので、しっかりお手入れしてフッ素をつければ、それ以上進行しないですよ。
そういうこともあるんですね。
C2の虫歯 〜虫歯の5段階:象牙質まで進んだ虫歯〜
C2の虫歯では、エナメル質の内側にある象牙(ぞうげ)質まで虫歯が進行します。
C2とは
象牙質(ぞうげしつ)まで進んだ虫歯
C2の歯の状態
虫歯が歯の内部に広がり、穴が空いている状態
防御機能がないため放置するとドンドン進行していきます。
早めの処置が必要となります。
C2虫歯の症状
痛みやシミを感じない場合が多い。
実は象牙質には最大の弱点があるんです。
え・・弱点ですか?
はい、象牙質は防御機能がないんですよ。なぜ象牙質に防御機能がないかというと、エナメル質という身体の中で一番硬い組織が守ってくれているからです。たとえば、ガタイのいいSPが自分を守るために四六時中囲んでくれていたら、自分で身を守る必要がないようなものですよね?
そうですね、自分で戦う必要がないですし・・
まさにその通りです。象牙質も自分で自分の身を守る必要が全くないんです。だから防御する能力がないんです。
なるほど。
エナメル質から象牙質まで突破してきた虫歯の菌は、防御機能が全くない象牙質で一気に感染を拡大させてしまうんですよ。
それはいやですね・・。
だから私たち歯科医はC2に進んだ虫歯はできるだけ早く取り除く治療をします。
削ったところに、詰め物やかぶせ物をする治療をするんです。
なるほど。
ただ、この段階で虫歯の痛みを感じる方がどれだけいるかというと、全体の2割くらいなんですよね。
痛みを感じないから、ご自身では虫歯があることに気づけず、虫歯が次の段階にいってしまう方がいるんです。
(歯医者は苦手で来たくなかったけど、定期的に見てもらっていれば良かった。)
C3の虫歯 〜虫歯の5段階:歯髄まで進んだ虫歯〜
虫歯の感染が進行して、エナメル質、象牙質にとどまらず、さらに歯髄(神経)まで達してしまったものをC3の虫歯と呼びます。
C3とは
歯髄(しずい)まで進んだ虫歯
C3の歯の状態
虫歯が奥深くまで進み、虫歯菌が歯髄(神経)まで進んだ状態
C3虫歯の症状
激しい痛みを感じることが多い。放置すると神経が死んでしまい、痛みを感じなくなることがあります。(治ったわけではありません)
歯髄とは、例えるなら人間の体でいうと脳みそや血液のような中枢組織のイメージで、血管を通して歯に栄養を送り、歯に異変があったら、痛みを伝えてくれる役割をしているところです。
歯髄は神経や血管が通っているので、C3の虫歯は血のめぐりにのって細菌がなだれ込んでしまい、歯の根の方に感染が進んでしまいます。
それはいやですね・・。治療できるんですか?
C3まで進んだ虫歯は、歯髄を取り除いてキレイにする治療をするんですけど、歯の根は複雑に分岐していて、植物の根のように網の目構造のようになっていることがあります。
こんなに細いんですね・・・こんなところをキレイにできるんですか?
歯の根の治療もなるべく成功するようにするんですけど、難易度が高いのが現状です。保険診療で治療を進めると、4本治療しても3本は再治療になるというデータもあるので、再治療のループに陥ってしまうこともあります。再治療のループに陥ってしまうこともあります。ループと言いましたが、実際のところ再治療しても2~3回が限界ともいわれています。
(うちの母ちゃんが何度治療しても治らないといっていたのはこれか!)
C4の虫歯 〜虫歯の5段階:抜歯が必要?〜
さらに虫歯が進んでC4になると、感染が歯だけでなく骨に膿を作って骨を溶かしはじめます。
歯の病気だったのが、骨に転移して、骨の病気になってしまいます。
C4とは
歯根だけ残った虫歯
C4の歯の状態
歯冠部(歯肉から上の部分)がほとんど崩壊している状態
C4虫歯の症状
歯髄(神経)が死んでしまい、痛みが一時的に無くなる場合があります。(治ったわけではありません)
やがて歯根の先端部(骨)に膿が溜まり、激しい痛みがおこります。全身の健康を害することにもなります。
ここまでくると歯が細菌の生成工場のように、どんどん細菌をまき散らしてしまうので、学問上は「抜歯しましょう」という段階になります。
臨床の現場では延命措置がありますが、今はその話はおいておきますね。
虫歯で歯を失わないための考え方
ここまで虫歯の5段階について紹介をしました。
この研究をした医師たちは虫歯で歯を失ってしまう人を救いたくて研究していました。その研究者たちが推奨してくれたのは、虫歯という感染症から歯を守るためには、C2の状態から先に進ませないことが大事だということです。
C3になってからでは遅いんですね・・
その通りです。もちろんC3の治療法も色々ありますが、神経を抜いてしまうので痛みも感じないし、血管を抜いてしまうので歯に栄養もいかないので、歯の長持ちはしづらいです。
そもそもC3になる前にC2の時点でとどめたり、今C0やC1の虫歯をその段階でとどめようという考え方が、予防歯科という考え方になります。
なるほど。
次はサークル歯科クリニックが掲げる治療方針についてお話します。
阿部さんの虫歯治療の必要性と緊急度
当法人では、患者様がもっている価値観の優先順位に基づいて、患者様に十分な情報提供をした上で、患者様と治療内容を決定していきます。
現状、阿部さんのお口にはC0とC1の虫歯がいくつかあり、C2の可能性が高い虫歯もあります。
C1やC2という虫歯の進行度合いとは別に、私たちサークル歯科クリニックの歯科医が歯の治療計画を考える時の段階分けについて紹介しますね。
虫歯治療 | |
---|---|
マストな状態 | 最低限の治療を希望する方向け。 もし治療しなければ、このままだと近い将来、歯を抜かないといけなくなってしまいますよという状態。 |
ベターな状態 | よりよい状態を目指したい方向け。 今のうちに治療しておいたほうが、よりよい状態になれますという状態。 |
ベストな状態 | パーフェクトを目指したい方向け。 今後虫歯にならないようにしたり、見た目を美しくして、理想的な状態を目指しましょうという状態。 |
虫歯治療の緊急性と患者様の価値観 | |
---|---|
マスト |
もし虫歯治療しなければ、このままだと近い将来、歯を抜かないといけなくなってしまいますよという状態。 ■治療が推奨される人 |
ベター |
今のうちに虫歯治療しておいたほうが、よりよい状態になれますという状態。 ■治療が推奨される人 |
ベスト |
今後虫歯にならないようにしたり、見た目を美しくして、理想的な状態を目指しましょうという状態。 ■治療が推奨される人 |
阿部さんは「なるべく治療回数、治療期間を少なく」ということなので、「マスト」を中心にお話ししますね。
はい、お願いします。
阿部さんのお口の写真をみると、奥歯はC2の虫歯の可能性が高く、治療が「マスト」です。
はい。
他の歯をみると、反対側の奥歯は以前治療した歯の詰め物が入っていて、経年劣化してしまっています。
詰め物が浮きかけてしまっているので、中で虫歯になっている可能性があります。
この1、2年で治療した方がいいけど、今でなくても大丈夫です。様子を見て、モノがよくつまるようになった、歯がしみる、痛みがでるといった症状があれば「マスト」に移りますが、今はまだ「ベター」です。
なるほど。
他にも写真でみるとC0とC1の虫歯がありますが、すぐに削る治療は必要ありません。虫歯が進行しないように、表面を研磨してあげてペーストをつけて磨いてあげて、フッ素で硬くしましょう。
阿部さんの歯についてまとめてみるとこのようになります。
虫歯治療 | |
---|---|
マストな状態 |
阿部さんの歯1:奥歯のしみる歯(C2) |
ベターな状態 |
阿部さんの歯2:詰めものが経年劣化で浮きかけている奥歯 |
ベストな状態 |
予防治療 |
---|
阿部さんのC0とC1の虫歯→クリーニングとフッ素をして経過観察 |
はじめは虫歯の数だけ削るのかとただただ憂鬱でしたが、まず自分の歯の状態を理解できて安心ではないですが落ち着いて考えられるようになりました。
それはよかったです。では次にレントゲンをお見せしますね。
白黒のレントゲンではものの硬さを正確にみています
さきほど大きなレントゲンの機械で撮影させていただきましたが、今の時代、手のひらサイズのスマホですごく綺麗なカラー写真を撮れるのに、レントゲンではあんなに大きな機械で白黒写真を撮るのって不自然だと思いませんか?
たしかにそうですね。
これには理由があって、私たちはレントゲンでものの硬さを主に見ているんです。
レントゲンで硬さ?どういう意味でしょうか?
コントラストと言って、私たちの歯や骨のように硬いモノは白く、眼球や神経のように柔らかいものは黒く映ります。あと人工物も白く映ります。
それで白黒なんですね。
ちなみに今回治療が「必要な状態(マストな状態)」の奥歯のレントゲンがこちらです。前の歯医者さんで治療した詰め物が白く映っていて、その下が黒くなっているのわかりますか?
あ~、たしかに黒いですね。
今回、その部分に進行する虫歯ができてしまっているので削って取り除く必要があります。
はい。
虫歯を削った後の詰め物はどうやって選ぶ?~セラミック/ジルコニア、プラスチック、金属のメリット・デメリット~
虫歯を削って取りのぞいた後は、詰め物をします。詰め物にも種類があるので紹介しますね。
はい。
詰め物は医院によって色んな名前で出しているんですが、世界中どこにいっても大きく分けて3種類しかありません。
- セラミック / ジルコニア系
- プラスチック系
- 金属系
3種類の中でもそれぞれメリット・デメリットがあります。
私たちから「どれじゃなきゃだめ」というのはないので、ご自身にあったものを選んでいただければと思います。
あの・・・先生からお勧めとかはないんですか?
もちろん個人的にはありますが、価値観は人それぞれなので、阿部さんがご自身の価値観にあった物を選んでいただけるように説明しますね。
わかりました。
詰め物と耐久性
まず3種類の耐久年数を比べるとこちらになります。
10年約90%
20年85%以上
2~3年
(5.8年)
セラミック / ジルコニアの耐用年数は10年約90%
耐久性という面で3つの材質を比べると、セラミック / ジルコニアは、圧倒的に優れていて、10年で約90%もちます。
最新のデータでは20年で約85%以上もつと言われています。
なぜ20年かというと、20年前くらいからしっかりと研究が始まったからです。。だからそれ以上は未知数なところがあります。
歯のエナメル質と同じような物性(硬さや熱膨張係数など)の材質がないかな〜と研究者の方が調べてくれて見つかった材質です。
日本ではセラミックやジルコニアというと審美のイメージがありますが、海外やもともとの開発段階では長持ちすることを目的としています。
セラミックは女性がいれるものというイメージだったんですけど、男性でもセラミックを選ぶ方はいるんですか?
はい、男女関係なく、長持ちをご希望の方はセラミックをいれる方が多いです。セラミックやジルコニアは歯のエナメル質とほぼ同じ成分なので、ご自身の歯と仲良くなってくれて、しっかり化学結合してくれます。
実は単にセラミックで治してもこんなに長持ちしません
「セラミックで治療したのに3年でダメになった」当院に転院された方からこんな声を聞くことがあります。
長持ちの秘訣は「削り方」、「歯を保護する材料」、「型取り法」、「歯とつける時に使用する薬やセメント」など1つ1つのステップを適切に処置することが一番大切です。
研究の結果、このような治療の過程において最終的に歯の代替品として最も適切だったのがセラミック系で、そしてそれがたまたま歯と同じような色をしていました。つまりセラミックという材質だけで良い治療ができると勘違いしてはベストな治療には繋がりません。
同じ材質を使用していても値段や治療経過におてい医院によって違いがでるのはこのような理由があるからです。
もちろん高ければよい結果につながるというものではないですが、当院では、この様な一連のプロセスを妥協無く行い、経過をみていくことで長持ちが実現させています。
プラスチックの耐久年数は2~3年
次にプラスチックについてです。セラミックやジルコニアと同じく、プラスチックも白い詰め物です。ただし、有機物質といって水分を含んでいるのと、材質がプラスチックという点で、強く噛んだ時に割れる等の破損しやすいです。
データによると、プラスチックの詰め物の耐用年数は2~3年です。
100円ショップに行くとプラスチックのコップが売られていますが、それと同じプラスチックなので、どうしても短くなります。
(プラスチックって本当にそのままプラスチックだったのか)。
金属の耐用年数は(5.8年)
最後に金属の耐久性についてですが、実はドイツはじめヨーロッパの各国で金属で歯を治療することが禁止された国もあり、耐用年数について海外の調査結果はありません。
日本では岡山大学というところが、金属で治した後に虫歯になるまでの年数を出してくれているんですが、それが5.8年です。
金属はプラスチックよりも丈夫ですが、金属と歯が化学結合するわけではないので、縁石の下に虫がいるように、金属の下にマイクロリゲージという隙間ができて、そこから虫歯の細菌が繁殖してしまいます。
ご自身で防ぎようのない虫歯ができるまでの期間がだいたい5.8年ということです。
なるほど。これだけ見るとセラミック / ジルコニアが良さそうですね。
そうですね、ただし優れた素材はまだ保険適応されていません。
次は費用についてお話させていただきます。
詰め物と治療費
奥歯の詰め物のお値段についてお話させていただきます。
77,000円(税込み)
保険適用外
2,000~3,000円台
保険適用の場合
4,000~5,000円台
保険適用の場合
セラミック / ジルコニアは1本あたり77,000円です。
削る費用や型取りなど基本的な治療はすべて含まれています。
プラスチックは保険適用の方で2,000~3,000円台、金属も保険適用の方で4,000~5,000円台です。
*中野坂上サークル歯科クリニックの料金表です。
*上記のお値段は、今回の阿部さんのケースのような小さめの奥歯の詰め物の料金です。大きめの詰め物の場合は88,000円、かぶせ物の場合は132,000円と少し異なりますので詳しくはお問い合わせください(セラミック / ジルコニア・税込み)。
セラミック / ジルコニアはお値段もいいんですね。
おっしゃる通り、セラミック / ジルコニアは保険適用外なので自費診療となる分、他よりも自己負担が多いです。
治療にかかる費用・耐久性・審美性が全然違うのがこの3種類の詰めものです。
患者さんの価値観によってどれがいいかは違うと思いますし、そこに私たちの意見はありません。
まったく、ないんですか?
はい、私たちは患者さまが詰め物を選ぶのに必要な情報は提供しますが、それを選ぶのは患者さま自身です。
「とにかく安く、ちゃちゃっとやってくれよ」という方はプラスチックになりますし、「ある程度の耐久性があって、安いのがいい」という方は金属になります。
また「ずっと自分の歯でいたい」という方はセラミック / ジルコニアになるかと思います。
なるほど・・・。
今日すぐに阿部さんに決めてくださいとは言いません。
次回までにある程度決まっていれば、それに合わせた処置を行っていきます。
わかりました。
虫歯進行をC2で止められるかどうかが、歯の健康寿命の肝~カルシウムとイミディエイトデンティンシーリング~
実はもう一つお話することがあって、今回の阿部さんの虫歯はC2の中でも深いんです。深い虫歯を削ってそのまま詰めものをすると、痛みを感じたり、しみたり、歯が欠けたりと色々な問題がでてくるので、詰めもの以外の神経を保護するお薬を入れると決まっているんですね。
はい。
実は前回、別の歯医者さんで治療した時も虫歯が深いので、お薬を入れて神経を保護しているんです。先ほどのレントゲンをよくみると、前回入れたお薬の下から虫歯になってしまっているのがわかります。
え、お薬の下からですか?
そうなんです。下から虫歯になってしまっているんです。
というのも、実はお薬にも二種類あって、前の歯医者さんもしてくれた治療法が一般的な単治・覆髄(ふくずい)です。
一般的な単治・覆髄(ふくずい)とは
虫歯の感染箇所を削り取り、虫歯が深い場合、保険診療の範囲で国の定めるセメントを用いて保護する治療です。
利点は、保険適用が可能なので、安価にて治療が行えることです。
欠点は、手で練ったセメントを置き固めているだけなので、歯に接着することはないという点です。また練る過程でセメント内部に気泡が発生するので、強度も不足してしまいます。
こちらの治療法ですと、カルシウム系のお薬を使うので、歯に優しくて神経の保護もできます。
ただ、欠点があって、置くだけのお薬で歯と結合されていないので、ばい菌がアクセスフリーで入ってしまうんです。
そのため長期的な視点では歯を守るのが難しいと言えます。
そうだったんですか・・。
それを回避するための治療がもうひとつの治療法でイミディエントデンティンシーリングというものです。
さきほどのお薬と違って、歯としっかり結合してくれます。
イミディエットデンティンシーリングとは
深い虫歯(2mm以上)に対し、歯と化学的に結合できる高品質な材料などを用いて保護する方法です。
利点は、お薬の物性が象牙質と似ているので、歯としっかり化学結合するため、二次的な虫歯になる可能性が低いことです。
欠点は、保険適用外の治療という点です。
虫歯を削ったら神経の近いところまでいってしまうので、象牙質が露出したところに象牙質と物性のとても似たお薬を入れて、神経を保護します。
これは身体のどこの部分でもそうなんですが、身体と同じ成分のお薬を入れると仲良くなってしっかり結合してくれます。
だから、なにかの間違えでエナメル質が虫歯に突破されてしまったとしても、このお薬が象牙質を守ってくれるので、二次的な虫歯になる可能性は低いといわれています。
またイミディエントデンティンシーリングは海外からきたお薬で、保険適用外です。
日本の医療のルールで混合診療は禁止されているので、このお薬の治療を行う場合は、その上のかぶせ物の治療も保険適用外となります。
そしたらイミディエントデンティンシーリングをして、金属を選ぶというのはできないんですか?
選ぶことはできるんですが、金属の治療も自己負担100%になってしまいます。
お支払額としては、セラミック / ジルコニアを選んだ時と近い費用になってしまいます。
なるほど。
費用は、先ほどの詰め物で、セラミック / ジルコニア のところでお見せした77,000円にすべて含まれています。
もっとお金がかかると思っていました。
自由診療なので医院によって異なりますが、当院では追加はかからないのでご安心ください(笑)。
セラミック / ジルコニアを希望するとしたら、お支払いって次回現金払いになるんでしょうか?
次回のお支払いとなりまして、クレジットカードもご利用いただけます。
わかりました。ちなみにセラミックとジルコニアは同じですか?
たまに聞かれますね、セラミックとジルコニアってどう違うんですか?とこれを詳しく話しますと・・・5、6時間かかってしまうんです!
(笑)
本当に簡単に書くと、このような違いがあります。
セラミック
硬さ | 歯と同程度に硬い |
歯との化学結合 | 非常に強い |
ジルコニア
硬さ | 歯よりも硬い |
歯との化学結合 | 比較的強い |
セラミックとジルコニアのどちらがいいかというと、ケースバイケースです。
歯科医の中でもどちらかが必ずいいという結論はまだ出ていません。
ただスポーツ選手や噛み合わせが強い方の中には、ご自身の歯も削れてしまう方がいるので、そういった方はジルコニアの方が向いています。
ただ、歯との化学結合はセラミックの方が高いので、神経が生きている歯にはセラミックがいいという考え方もあります。本当に一概にどちらがいいとは言えません。
実際の治療でどのように決めるかは、虫歯を削って型取りして、その型取りのデータを解析して、セラミックとジルコニアのどちらが適しているかを最終決定します。
つまり基本的には私たち(医院)に一任していただいています。
なるほど、はじめは保険治療でさっとやってもらいたかったのですが悩みますね。
大事な歯のことですので、検討されるのであれば次回の治療時に、「プラスチック」「金属」「セラミック / ジルコニア」のいずれかからお選びいただければと思います。
わかりました。実はこれまで歯医者が苦手であまり考えないようにしていたのですが、歯について真剣に考えないとと思いました。
ありがとうございます。
治療内容でお悩みの方へ
虫歯治療を繰り返しているうちに、歯が弱くなってしまっていることに気が付かれる方もいるのではないでしょうか。
当院では歯を削る前に、お口が今どんな状態でどんな治療が必要なのか、どんな選択肢があるのかなどを詳しくお話しします。
患者さんの価値観は様々です。歯の健康を重視する方、見た目の美しさを重視する方、来院回数や治療期間を重視する方、治療費用を重視する方など、お一人おひとりの価値観に寄り添います。
また、治療の際はすべての患者さんがなるべくリラックスして受けていただけるよう様々な配慮をしております。たとえば歯医者さんが苦手な方にも配慮しますので、まずはご相談ください。
中野坂上駅から5分の歯科医院です