ひどい虫歯は抜くしかない?~抜歯をする場合としない場合の治療紹介~

2023年10月31日

ひどい虫歯は抜くしかない?抜歯をする場合としない場合の治療紹介

出産後に虫歯が増えた患者様

今回の患者さま(出産後に虫歯が一気に増えた)

こんにちは、近藤美波(40)です。
仕事では人前に立ってプレゼンする機会もあるので、身なりに気をつけています。

歯磨き?しっかりしていますよ。

でも出産した後の乳幼児のお世話が大変だったので、虫歯が一気に進んでしまって、実はもうすでにインプラントが入っているんです。本当にショックでした。

こんにちは、近藤さん。
はじめまして。院長の大金と申します。
よろしくお願いします!

よろしくお願いします!

先ほどは問診票にご記入いただき、ありがとうございました!今日はセカンドオピニオンでお越しいただいたんですね。

問診票
他院でインプラントを勧められたけど、説明が少なく不安になったため納得できて治療できる医院を探していた。

歯ぐきが腫れて、抜歯と言われ、セカンドオピニオンにきました

実はこの前歯なんですけど、かかりつけで治療したばかりなのに、腫れてきてしまって・・・それで行ったら、「次はインプラントだね」と言われてしまったんです。

今ある歯を抜くということですね。

そうなんです。
この歯もジルコニアを入れたばかりなので、ちょっと納得がいかなくて。

歯がぐらぐらしていて、歯ぐきも腫れているようですね。

はい。このままだと不安なので、応急処置もしてもらえますか?

はい、わかりました!今日はレントゲン画像などはお持ちですか?

何も持ってきていないので、こちらで検査していただけますか?

かしこまりました。検査して状況をみた上で、近藤さんにはどんな治療の選択肢があるかをお話させていただきますね。それではこちらにどうぞ。

検査、お疲れ様でした。
今回なぜこのように歯ぐきが腫れてしまったかというと、虫歯が原因なわけですが、これから色んな可能性をお話してして行きますね。

はい、納得した上でないと治療に不安があるので、私でも理解できるように詳しくお願いします。

では前提となる情報からお話しますね。

健康な歯の知識

まず、健康な歯についてお話しますね。

身体の中で1番硬いエナメル質

健康な歯の外側にある白い部分をエナメル質といいます。
エナメル質はヒトの身体の中で1番硬い組織で、防御層の役割を持ちます。

エナメル質:防御層

エナメル質が守っている象牙質と歯髄

最も硬いエナメル質が何を守っているかというと、象牙質や歯髄といわれる部分です。
たとえるなら象牙質は内臓組織のような役割をもっていて、歯髄は脳みそや神経のような役割をもっていて、エナメル質はそれらを守っています。

象牙質:内臓や筋肉
歯髄:脳みそや神経

歯髄には神経と血管が通っているため、白い歯から血が出るということがありえます。

なるほど。エナメル質がデリケートなものを守っているんですね。

骨まで細菌が届かないために

私たちの歯は歯ぐきに埋まっているように見えるんですが、実際のところ歯ぐきの厚みは2mmくらいしかなくて、その下にある骨にささって支えられているんですね。

骨にささっているんですね。

実はこの骨に細菌が侵入してしまうと、骨が溶けてしまうんですね。
だから健康な歯では細菌が入らないようになっているんですけど、どのような仕組みなのかを説明しますね。
健康な歯の上の部分は歯と歯ぐきがくっついて細菌が入らないようになっています。
歯と歯ぐきの間はヘミデスモゾーム結合という結合でくっついています。
日本語で直訳すると、中途半端な結合という意味なんですけど、半分くっついているような状態なわけなんですね。
吸着して陰圧になっているからそこに細菌が入らないような仕組みになっています。
健康な歯の下の部分は、歯と骨の間に歯根膜というものが入っていて靱帯のような組織なので、しっかりぴたっとくっついています。

健康な前歯に風をあてても歯と歯ぐきがゆるくくっついた状態なんですが、近藤さんの前歯に風を当てると、歯ぐきがビラビラビラと動いてしまっているんです。
歯と歯ぐきがお互い分離してしまっている状態です。

歯の部位歯の境界から細菌が入らない仕組み結合力
歯の上部歯ー歯ぐき間のヘミデスモゾーム結合
(中途半端な結合)
弱い
歯の下部歯の周りを覆う歯根膜
(靱帯のような弾力)
強い
歯と歯ぐきが分離してしまっている写真

歯周ポケットが深くなってしまっているということですか?

歯周ポケットは歯と歯ぐきが結合していることが前提なのですが、近藤さんの場合は歯と歯ぐきがお互い完全に分離してしまっているので、歯周ポケットというシステムが破綻してしまっているんですね。
これはなんでかといいますと、虫歯が原因なんですが、ここから少し虫歯について前提条件となる情報をお話ししますね。

はい。

初期の虫歯を削らない?虫歯の進行段階と最新世界標準の考え方

ちょっと前までは、私たち歯医者の中でも虫歯は、「虫歯があったら削って治療する」「虫歯がなかったら削って治療しなさい」という考え方だったんです。

はい。

でもそれでは本当は削らなくていい歯を削ってしまったり、抜かなくていい歯を抜いてしまうことになっていないかな?というので、アメリカの歯科医師たちが研究したんですね。
それが今は世界中の標準的な考え方になっていますので、それに基づいてお話ししますね。

そうなんですね、お願いします。

エナメル質の虫歯治療(C0とC1)

先ほどお話ししたようにエナメル質は防御層なわけじゃないですか。
中学1年生になって剣道部に入って、初日で防具に少し傷がついたくらいで修理するかというと・・・

防具なんで、修理しないですね。多少の傷はつくものですし・・。

はい、まさにエナメル質も同じなんです。エナメル質に虫歯ができるとC0では色がわずかに変わって、C1では色が黒くなるんですけど、以前は黒くなった虫歯はすぐに削っていました。
でも、今は削らない選択肢も出てきています。

エナメル質の虫歯(C1)の治療

放っておいて大丈夫なんですか?

放っておくことはしません。虫歯は感染症なので、放っておいたら、どんどん感染が広がってしまいます。感染がそれ以上広まらないように処置をすれば、削らないことも可能です。

エナメル質にできた虫歯の進行を防ぐ処置
エナメル質は防御層のため、エナメル質を失うと歯の防御機能が落ちてしまいます。そのため、エナメル質にできた虫歯は、しっかり処置をすれば、削らないなくていいと学術的に言われています。

エナメル質の塗布
エナメル質が酸に溶けて柔らかくなってしまっているので、フッ素を塗布して、硬いエナメル質にしていきます。

ハイポリッシュサーフェス
エナメル質の表面がざらざらだと砂壁のように汚れがつきやすくなってしまうのですが、衛生士さんに歯をお掃除してもらって表面を磨き上げます。私たちはハイポリッシュサーフェスと呼んでいるんですが、歯の表面を磨き上げてツルツルにすると、食べかすもそこにとどまれないし、菌も付着しづらくなります。
このようなお手入れを定期的にすることで、虫歯の進行を遅らせたり止めたりすることができます。

なるほど。でも・・・それで何年ももつわけではないですよね?

いえいえ、実は私自身も十代の頃に見つかったC1の虫歯が未だにC1なので、しっかりお手入れしてフッ素をつければ、ここまでの虫歯はそれ以上進行しないですよ。

そんなことがあるんですね!

ただ、ここまでの虫歯は大丈夫なんですが、その先に進んでしまうと虫歯はおいておけなくなります。

象牙質の虫歯治療(C2)

虫歯の感染が歯の表面にあるエナメル質をすべて破壊すると、次の象牙質に進んでしみます。

防御層が突破されてしまうんですね。

はい、その通りです。象牙質はエナメル質と違って、防御する機能がないんですよね。エナメル質を人間に例えるならSP集団です。
誰を守っているかというと象牙質とその奥です。
つまり、エナメル質というSP集団に守られているから、象牙質は自分で戦う必要がないんです。
だから虫歯が象牙質に達してしまったら、一気に虫歯感染が進んでしまいます。

象牙質の虫歯治療
象牙質に達した虫歯は、なるべく速やかに虫歯の治療を行います。いわゆる昔からある虫歯治療で、感染箇所を取って詰め物やかぶせ物をするものです。

ちなみに、象牙質の虫歯で痛みを感じるのは全体の何割くらいだと思いますか?

5割くらいですか?

実は全体の2割程度です。

え、そんなに痛みを感じないんですか?

はい、虫歯の原因菌というのは非常に頭がいいんですよね。
泥棒も玄関から入ってきたらスグに見つかるんですけど、ルパン3世のようにそーっと侵入して中核組織まで入り込んでしまうんですよ。
つまりどういうことかというと、虫歯も人間が痛みを感じたらすぐに気づいて対処ができるんですが、虫歯は人間の痛みを感じないところからやってくるんですよね。
だから古代から現代まで滅びずにいる菌でもあるわけなのですが・・。

菌が賢いのも困りものですね。

そうですね・・。歯の痛みや症状を感じて「やばい!」と歯医者さんにいらっしゃる患者さんが多いんですが、そのような場合は次のC3に進んでしまっているケースが多いんです。

歯髄の虫歯治療(C3)

象牙質の先には歯髄と言われる部分がありまして、先ほど脳みそや神経に例えたところですね。歯髄には神経が通っているので、痛みも感じやすいです。虫歯の原因菌が歯髄に達してしまうと、一気に血流にのって菌が歯全体に巡ってしまいます。

歯髄に達した虫歯の治療
歯の根の治療を行います。歯髄が入っている歯の根の内容物を全て除去して無菌化した後、歯の根に充填物をすき間なく入れ込みます。歯の上にはかぶせ物をします。

イラストで描くと、歯の根っこってシンプルに見えるじゃないですか。でも実際の歯の根は・・・

歯の根管(神経・血管の通り道)を黒く染めた標本

めちゃくちゃ細かいですね。

そうなんです。特に先端1/3は網目状のようになっているので、この部分まで虫歯菌が入ってしまったら、治療器具が入らないし、お薬も浸透しきらないから、身体にとって悪い菌が潜むことになるんですよ。

うーん。

このような状況なので、歯の根の治療を行っても、虫歯の再治療が必要になる可能性がとても高いんです。



※保険診療の場合

たとえばお口の中に根っこの治療をした歯が4本ある場合、そのうちの2本か3本はもう一度治療が必要になってしまうということになります。

そうなんですね。

ここで「再治療すればいいんでしょ」、「歯医者に行けばいいんでしょ」という受け止め方をする方もいるのですが、そういうわけにはいかないんですね。なぜかというと、虫歯菌は貪欲なので、歯を占拠したら次のターゲットに向かっていくからなんですね。

骨まで進行した虫歯治療(C4)

虫歯菌が歯を占拠した後は、次のターゲットとなる骨に向かっていきます。
骨に達してしまうと、悪性の病気が転移した状態と同じような状態になります。
呼び方もC4と呼びます。ここまでいくと、歯の病気が骨の病気になるんですね。

骨の病気ですか?

はい。骨の感染が進むと、中を伝って治療していくにも限界があります。
そこで歯を抜かないといけなくなります。

そうなんですね・・。

<診断>歯の根の治療後、歯根が破折してしまっていた

はい。近藤さんの前歯に話を戻しますと、前回2年前に治療した歯がぐらぐらしていて、歯ぐきも風をあてるとビロビロと動いてしまう状況でした。

はい。

先ほど撮ったレントゲンを診てみると、2年前の治療で歯の根の治療がされた後があります。
歯の根の治療をして、歯の土台もしっかり作られていて、その上にかぶせ物をしてあることがわかります。

はい。

これ自体は問題ないのですが、問題は、このレントゲンの黒い部分です。
みえますか?

確かに黒いですね。

これは歯の根が完全に折れているとこのように写ります。歯の土台とご自身の歯が折れてしまっているんですね。折れてしまった結果、土台から上がぐらぐらしてしまっているわけなんです。

そうなんですね。

近藤さんのように歯根が折れてしまっている場合、今後も根として使えるかどうかが問題となります。

根の治療をした歯が破折した場合の治療法
・セラミック等の歯冠部が破折した場合
歯冠部を再治療します。

・土台が破折した場合
土台・歯冠部を再治療します。

・歯根が破折した場合
歯を残す場合は、歯の根から上の部分の再治療が必要になります。
ただし、歯の根はそれよりも上部を支えなければいけないので、支えとして機能するかの判断が必要となります。

実際に今後も根として使えるかどうかは、実際にお口のかぶせ物を外して、実際にドクターが歯の内部をみて、状況判断をする必要があります。
実際にお口のかぶせ物を外した結果、もしかしたら歯を根っこから抜かないといけなくなるかもしれないし、そうでないかもしれません。

はい。

でも「どうしても歯を抜きたくない」という方のための治療法もあるにはあります。
あとで詳しく話しますが、その治療の後、長持ちするかというと、あまり楽観的にお話できないんですが・・。

そうなんですね。

歯科医師から「歯を抜きたくないならこういう治療法がありますよ。」と提案があったら、患者さんはいい提案だなって思うかと思うんです。
でもそれが1、2年しかもたない可能性だってあるわけなので、私はそういう提案をする時は、統計的に平均何年持ちますという話をするようにしています。

そうなんですね。

今は自費診療も含めればいろんな治療の選択肢があります。
当院としては、状況をみてドクターが勝手に治療内容を決めるのはなるべくしないようにしていて、歯を残す場合のメリット・デメリット、歯を残さない場合のメリット・デメリットをすべてお話して患者様自身に治療を選択してもらっています。

なるほど。

患者さんと歯科医師が同意して、「こういう治療を目指そう」「この山を目指して登ろう」と治療を進めても、ある日突然そちらの道が封鎖していけなくなってしまうこともあるんですね。
道が封鎖されてしまう可能性が高いルートはあらかじめ知ってから判断してもらったほうがいいと思いますので、ちょっと話が長くて大変かと思うんですけど、今後ご自身の歯をどうしていきたいのかしっかり聞いた上で考えていただければと思います。

はい。

ちょっと話が長くなりますが、「抜歯を回避するための治療法」と「歯を抜いた場合の治療法」についてお話しますね。

お願いします。

抜歯を回避するための治療法

ご自身の歯が歯ぐきの内部に少ししか残っていないと、多くの場合は抜歯となります。
ただし、歯ぐきに埋まっている歯の根が健康で、いくつかの条件がそろえば、抜歯を回避して治療できます。

エクストリュージョン:残っている歯の根を引っ張り上げる治療
クラウンレングスニング:歯ぐきを痩せさせます

エクストリュージョンとは

まずはエクスリュージョンから説明します。今回近藤さんの場合は前歯なので、歯の根の上に仮歯をつけて、歯の裏側にワイヤーを通して、隣の歯にフックをかけて、残っている歯の根をゆっくり引っ張り上げます。

エクストリュージョンとは
歯の根だけになってしまった歯を上に引っ張り上げることで、かぶせ物の土台を確保する治療法です。

エクストリュージョンのメリット
・歯を抜かずに治療ができます。
・治療後の歯の、歯とかぶせ物のフィットが良くなります。
・治療をしなかった場合と比べて長持ちします。
・外科的な処置(手術)が不要です。

エクストリュージョンのデメリット
・保険適用外の治療です。
・治療期間は長めに数ヶ月とります。(あまり早く歯根をひっぱり上げてしまうと。歯の根が吸収される傾向があるからです。)
・骨に埋まっている量が減るので、今までの健康だった歯と比べると、咬み合わせの力は低下します。(それでも引っ張り上げない状態よりはかなり良い状態です。)

エクストリュージョンの治療費用
お口の状態によりますが、最低5.5万円、平均8.8万円(税込)です。

歯の根を引っ張り上げた後は通常通りかぶせ物の治療に移ります。
エクストリュージョンは治療期間が長く取られてしまう治療なのですが、次に紹介するクラウンレングスニングは比較的短期間で治療できます。

クラウンレングスニングとは

クラウンレングスニングとは、歯ぐきに埋まっている部分を外科的に掘り起こす処置です。

クラウンレングスニングとは
歯の根だけになってしまった歯の歯ぐきを下げ、根の一部を露出させることでかぶせ物の土台を確保する治療法です。

処置の進み方
1.歯ぐきをめくります。
2.骨を人工的に削ります。
3.お肉と歯ぐきが痩せるので、残っている歯の根が出てきます。

クラウンレングスニングのメリット
・比較的短期間で治療が可能です。
・治療後の歯が歯とかぶせ物のフィットが良くなります。
・治療をしなかった場合と比べて長持ちします。
・歯周ポケットが改善します。

クラウンレングスニングのデメリット
・その歯だけ歯ぐきが痩せ、歯の出ている部分が大きくなってしまう。
・審美的な理由で前歯には不向きです。
・骨に埋まっている量が減るので、今までの健康だった歯と比べると、咬み合わせの力は低下します。(それでも引っ張り上げない状態よりはかなり良い状態です。)
・保険適用外の治療です。
・外科的な処置(手術)が必要。精密な診断の後、治療可否を診断します。

クラウンレングスニングの治療費用
平均7~8.8万円(税込)程度です。

どちらも難しそうな治療ですね。

はい、どちらも歯の根が骨に埋まっている部分が目減りしてしまう分、歯の骨の安定性は落ちてしまいますし、やらなくていいならやらないほうがいい治療です。
それでも今のお口の状態ですと、このような治療を行うことで、歯とかぶせ物のフィットが良くなり、やらないよりはやったほうが予後が良くなります。
ただ、残念ですが、それでもずっと長持ちするかというとそうではないです。

そうなんですね。

それでも今歯を抜くよりもなんとか残したいという価値観の方には、このような治療法がよいかと思います。
歯を抜く・抜かないについては、歯を抜いた場合の治療の選択肢も深く考えてみないと判断ができないかと思いますので、次に歯を抜いた場合の治療の選択肢を詳しくお話しますね。

歯を抜いた場合の治療法

もしも近藤さんが歯を抜く治療をするとして、その場合、歯を抜いた部分に対する治療法は世界どこに行っても3種類の方法しかありません。

インプラントの治療

1つめは、インプラントから紹介します。第二の永久歯と言われるように、ご自身の歯と同じような構造体を作ります。

インプラントとは
歯の失われた部位に人工歯根を埋め込み、歯冠をかぶせる治療法です。天然歯と同等の審美性と咬み合わせを再現できます。

インプラントのメリット
・(入れ歯とは違い)固定式なので違和感が少ないです。
・(ブリッジ・入れ歯とは違い)両隣の歯に負担をかけません。
・審美性が高い
・咬み合わせ
・メンテナンス性

インプラントのデメリット
・外科的治療が必要です。
・保険適用外の治療です。

インプラントの治療期間
3~10ヶ月

前歯のインプラント治療期間について

近藤さんのように前歯の治療をする方は、治療期間は長めに10ヶ月ほど見てもらうことになるかと思います。
治療期間中は目立つところなのでもちろん仮歯を作ります。
もしくは、少し特殊な治療なのですが、歯を抜いた瞬間にインプラントを入れるという方法もあります。
専門性が高い治療で慣れている歯科医師でないと難しいですが、この場合は4~5ヶ月で終わります。

はい。

あとは手術をすることになりますので、患者さんの全身状態によっては治療が不可の場合があります。

当院のインプラント手術
インプラント治療は外科手術が必要です。インプラントの人工歯根を歯槽骨(しそうこつ)に埋め込みます。当院では外科の手技に長けた口腔外科医が執刀します。
通常は部分麻酔でインプラント治療を行いますが、静脈内鎮静法という全身麻酔も対応可能です。麻酔でうとうとしている間に処置が終わるようなイメージで、日本歯科麻酔学会の専門医が麻酔を担当します。(日帰り)

外科手術ですので、高齢の方、全身の状態や骨の状態にが条件に満たない方は、治療を受けられない場合がありますので担当医までご相談ください。

インプラントの治療費用
当院での治療費は約52.8万円(税込)です。
骨を作る場合などは別途費用がかかります。

インプラントのメーカー
当院では世界4大メーカーのひとつ、ASTRA TECH(スウェーデン)社を採用しています。世界的企業なのでアフターフォローがしっかりしています。

インプラントの費用は当院だと都内の平均的な価格でやらせてもらっています。
大学病院だと+10万円くらいのイメージですし、他にはもっと安いところもあります。

そうなんですか。

はい。安いところは使っているインプラントのメーカーがそもそも違うかもしれません。

そうなんですね。

実はインプラントのメーカーって世界中で数百あると言われていて、価格重視のところもあれば品質重視のところもあって、インプラント市場の8割を世界4大メーカーが占めています。

インプラントって治療した後、長期にわたってつけるものじゃないですか。
その際、何か不具合があって上の部分だけ交換しましょうとなった時に、そのメーカーが潰れてしまっていたら、パーツを取り寄せられないんですよ。
メーカーによってネジが違うので。
そこで、当院ではインプラントの品質はもちろんなんですが、企業の安定性も抜群のメーカーを使用しています。

当院取り扱いのインプラントメーカー
ASTRA TECH社のインプラントを採用しています。

ASTRA TECH社は、インプラント世界4大メーカーのひとつで、半官半民で株式の半分をスウェーデンの国が持ち、残りの半分をアメリカの上場企業Dentsply Sirona社が持っています。企業の安定性は抜群です。

もしインプラントの値段を抑えたいというならば、使っているメーカーを価格重視のところにしていただくという方法があるかもしれません。
その場合はそういうメーカーを扱っている歯科医院さんでの治療になります。

なるほど。

では次にブリッジについて紹介しますね。

ブリッジの治療

二つ目は、ブリッジです。ブリッジは「橋」と同じ意味のブリッジです。隣の歯の全周をそれぞれ削って、橋をかけるように三連のかぶせ物を作ってかぶせます。

ブリッジとは
ブリッジは、インプラントと同じようにお口の中に固定できるタイプの欠損治療です。外科治療が必要ないため、インプラントよりも多くの方に受けていただける治療法です。天然歯の6割程度の咬み合わせが可能です。

ブリッジは、真ん中にダミーの歯をおくことによって、歯がないんだけど、きれいに有るように見せられます。固定式で違和感も少ないんですが、代償として隣の歯を削らないといけないという欠点があります。

ブリッジのメリット
・(入れ歯と比べて)固定式のため違和感が少ない。
・(入れ歯と比べて)取り外す必要がない。
・(インプラントと比べて)治療期間が短いです。
・材質を選べば、審美性も高い。

ブリッジのデメリット
・両隣の歯を土台にするため、咬み合わせの負担が強くなります。将来的に歯根が破折するリスクが高まります。
・両隣の歯は健康だとしても、全周を削らなくてはなりません。
・両隣の歯にぐらつきなどがあると、治療はできません。
・ブリッジが経年劣化などの原因で破損した場合、三連のかぶせ物を作り直す必要があります。

ブリッジの種類

ブリッジについては、いくつか種類がありますので紹介します。

保険適用のブリッジ治療

保険適用のブリッジ治療とは
保険適用のブリッジ治療とは、失った歯の両隣の歯を削り、土台にし、橋のようにブリッジをかぶせます。ブリッジは、銀を主体とした合金素材で、両隣の歯を合わせた三連のかぶせ物です。

保険適用のブリッジのメリット
・保険適用のため、お財布に優しいです。

保険適用のブリッジのデメリット
・長期間つけることで、歯ぐきにメタルタトゥーができます。
・歯と素材が化学結合しないため、いずれ虫歯になります。
・平均使用年数が7~8年と比較的短いです。

保険適用のブリッジ治療費用
保険適用で3割負担の方の場合、2万円前後です。

保険適用のブリッジは、素材が銀主体の合金です。
前歯の表面は白いプラスチックを貼るので白いです。
保険適用なのでお財布に優しいですがデメリットもあります。
まず、長期間金属のかぶせ物をすることでメタルタトゥーといって歯ぐきに黒いものが出てきてしまいます。
次にこの素材は歯と化学結合をしないので、一定期間たつと必ず虫歯になってしまいます。
平均使用年数が7~8年です。

必ず虫歯になるんですね。

はい、金属と歯は化学結合しないので歯が経年劣化でごくわずかに削られるすき間から雑菌が入ってしまい虫歯になります。
虫歯は両隣の全周削った歯が虫歯になってしまうので、そこが虫歯になったら、そのさらに隣の歯を土台にしてブリッジにする必要があります。

メタルボンドのブリッジ治療

次はメタルボンドのブリッジについて紹介します。

メタルボンドのブリッジ治療とは
メタルボンドのブリッジ治療とは、失った歯の両隣の歯を削り、土台にし、橋のようにブリッジをかぶせます。ブリッジは、外側がセラミックで、その内側に金属が使われており、両隣の歯を合わせた三連のかぶせ物です。

メタルボンドのブリッジ治療のメリット
・金属で補強するため、歯の欠損本数が増えても適合が良好です。
・ブリッジの外側には着色や変色がしづらいセラミックが使われています。
・セラミックなので、審美性が高いです。

メタルボンドのブリッジ治療のデメリット
・長期間つけることで、歯ぐきにメタルタトゥーができます。
・歯と素材が化学結合しないため、いずれ虫歯になります。
・平均使用年数が7~8年と比較的短いです。
・セラミックと金属部分を貼り付けるのに貴金属(ゴールドなど)を使用するため、値が張ります。
・保険適用外の治療です。

メタルボンドブリッジの治療費用
3連ブリッジの場合、約70万円目安です。
※治療が決まってから貴金属の時価によってお見積もりします。

メタルボンドはコスパが良くないので、正直あまりお勧めではありません。
保険適用のブリッジ同様、歯と金属は化学結合しないため、長持ちはしません。
その割に貴金属を使用するので、インプラントと同じくらいかそれ以上の値段がします。実際の値段は貴金属の時価を踏まえてお見積もりになるのですが、先日は3連のブリッジで60万円くらいしました。

金属が高騰する前に流行ったんですね。

その通りです。
今はどんな治療が主流になってきているかというと、次のジルコニアです。

ジルコニアのブリッジ治療

ジルコニアのブリッジ治療とは
ジルコニアのブリッジ治療とは、失った歯の両隣の歯を削り、土台にし、橋のようにブリッジをかぶせます。ブリッジの素材にはジルコニアという硬くて丈夫な材質が使われていて、両隣の歯を合わせた三連のかぶせ物です。メタルボンドに比べて歯を削る量も少なく、審美性にも優れています。

ジルコニアのブリッジ治療のメリット
・歯としっかり化学結合する素材のため、耐久性が高いです。
・人工ダイヤモンドと言われる白さで審美性も高いです。
・これまで見てきたブリッジと比べると、削る量も少なくて済みます。
・セレックシステムで治療するため、従来の型取りは不要、お口の中を3次元スキャンして作製します。

ジルコニアのブリッジ治療のデメリット
保険適用外の治療です。

ジルコニアブリッジの治療費用
3連ブリッジの場合、42.9万円~66万円(税込)です。

ブリッジ治療は長期にわたる治療なのと、壊れてしまった後のダメージが大きいので、将来的なお口の健康を重視する方にとっては、耐久性の高いジルコニアのブリッジが最適です。

なるほど。

近藤さんの場合、前歯3本がブリッジになるので、審美性をこだわるというのも選択肢の一つかも知れません。
色合いをより自然に近づけるのが上手な専門の技工士さんにかぶせ物を作ってもらうことも可能です。(※その場合は1本18万円+税からになります。)

接着性ジルコニアのブリッジ治療

次に同じジルコニアのブリッジでも削る量がとても少なくて済む治療法を紹介しますね。

接着ジルコニアのブリッジ治療とは
通常のブリッジ治療は両隣の歯を全周削りますが、接着性ジルコニアのブリッジ治療では隣の歯の裏側のみを削り、三連のブリッジを接着させます。治療に際して歯を削る量を抑えられるのが一番の特徴です。
※ただし、好条件を満たした一部のケースのみでの適応となります。

接着性ジルコニアブリッジのメリット
・隣の歯を削るブリッジ治療の中では、削る量が圧倒的に少ないです。
・ジルコニアなので審美性にも優れています。
・ジルコニアは接着性に優れた素材なので、金属の20倍以上接着します。

接着性ジルコニアブリッジのデメリット
・前歯の場合にのみ適用となります。
・保険適用外の治療です。

接着性ジルコニアブリッジの治療費用
1本の歯と隣の歯を治療する場合、27.5万円(税込)です。

隣の歯の裏側のみを削って接着するだけなので、歯の表側は削らなくて済むので、削る量はとても少ないです。人によっては、麻酔無しで治療が終わる場合もあります。

入れ歯の治療

最後に入れ歯について紹介します。
治療期間も回数も少なくて、取り外せるから清掃性にも優れているんですが、ご注意点も多い治療法です。

一番昔からある治療法で、隣の歯にフックをかけてバチッとはめます。
取り外し式です。間違えて着けたまま寝てしまったり、寝ている時に外れて運悪く気道に入ってしまったら、手術して取り出すこともあります。

入れ歯とは
入れ歯とは、歯を失ってしまった時にする治療の中で一番昔からある治療法で、歯を失ったところに人工の歯を取り付けます。取り外し式で、寝ている時は外す必要があります。

入れ歯のメリット
・治療期間が短い。
・両隣の歯を削らない。
・清掃しやすい。
・取り外せる。

入れ歯のデメリット
・咬む力は天然歯の10%程度です。
・異物感があります。
・取り外す必要があります。

そうなんですね。

そういう手間暇がかかってしまうのと、人と話すときにフックが見えたら入れ歯だとわかってしまう点がネックです。
前歯だと唇にひっかかって取れてしまうこともあるので、正直前歯にはあまり向きませんが、治療の選択肢としてはあります。

入れ歯の種類

1.保険適用の入れ歯
隣の歯にフックで装着します。審美的に気になる方もいますが、費用は保険適用3割負担の方の場合、1万円前後(税込)と欠損治療の中で最も安い選択肢になります。

2.ノンクラスプデンチャー
入れ歯が目立つのは、入れ歯を固定するための金属のフックがどうしても目立ってしまうからです。そうであれば、そのバネを目立ちにくくすれば気にならなくなります。
そのようなコンセプトで製作されたのが、「ノンクラスプデンチャー」と呼ばれるものです。
従来のように、入れ歯を固定する装置はあるのですが、それを金属ではなく、歯肉の色になじむピンク色の樹脂を利用することで目立ちにくくしています。
保険適用の入れ歯と比べると、比較的外れづらく、適合性が高いのが特徴です。費用は24.2万円~27.5万円(税込)です。

欠損治療では、ご自身の価値観にあった選択を

歯を失ってしまった場合の治療についてお話ししてきました。
このようにお話すると、患者さんから「インプラントが一番いいんでしょ」と言われることがあるんですが、その方によって一番いい治療法は変わってくると思うんです。

ご自身のお体の状態や価値観によって、一番いい欠損治療は異なります。

一番痛くない治療がいい。
→入れ歯が一番痛くありません。

なるべく自分の歯を削りたくない。
→入れ歯かインプラントなら、周囲の歯を削りません。

一番安く治療費を抑えたい。
→保険適用の入れ歯が最適です。
(ただしフィット感に違和感を感じやすいので担当医とよくご相談ください)次に安いのは保険適用のブリッジです。

今まで通りの咬み合わせを維持したい。
→インプラントが最適です。もっとも天然歯を模倣できているからです。

体力的に長い治療は避けたい。
→治療回数が少ないほうが良い方には、入れ歯が最適です。

治療の選択肢と決断のリミット

本日、前歯のセカンドオピニオンということでいらしていただいて、初めてにもかかわらず長くお話させていただいちゃったんですが、「抜歯を回避するための治療法」と「歯を抜いた場合の治療法」について、ご質問などはありますか?

もし次回こちらで治療をお願いするとしたら、どんなことを決めてくればいいでしょうか?

当院で治療するとして、極力なら歯を残したいんですけど、残す選択をするといっても、「1年か2年しか保ちませんよ」なのか「近藤さん、これは意外といけるかも」なのか、「これは半年もたないです。それでも残しますか?」になるのかは、現在のかぶせ物を外してみないとわからないんですね。

はい。

例えば歯を残して1年くらいは保ちそうという時に、「1年保つなら色々やってみて」という方もいれば、「1年なら抜いてしまうよ」という方もいます。人によって価値観は違うので、当院では「患者さんはきっとこう思っているから、こうしよう」という治療はしないようにしています。

はい。

次回うちで治療するのであれば、かぶせ物を外した時にどんな治療を選ぶのかをある程度考えてきていただければと思います。それが決まっていないと、私たちもかぶせ物を外せないので・・(笑)

わかりました。

今日の時点での応急処置としては、歯がぐらぐらするところを接着剤でとめましょう。後から外せる接着剤を使って、隣の歯に固定します。

お願いします!

治療内容でお悩みの方へ

当院では治療を始める前に、お口が今どんな状態でどんな治療が必要なのか、どんな選択肢があるのかなどを詳しくお話しします。

患者さんの価値観は様々です。歯の健康を重視する方、見た目の美しさを重視する方、来院回数や治療期間を重視する方、治療費用を重視する方など、お一人おひとりの価値観に寄り添います。

また、治療の際はすべての患者さんがなるべくリラックスして受けていただけるよう様々な配慮をしております。たとえば歯医者さんが苦手な方にも配慮しますので、まずはご相談ください。

中野坂上駅から5分の歯科医院です

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